銀行口座の名義変更
被相続人の名義のままである預貯金は、遺産分割協議がまとまっていない時点では、一部の相続人により勝手に引き出すことが禁止されています。
被相続人の死亡を銀行などの金融機関が確認すると、預金の払戻しが凍結されます。
そのため、預貯金を勝手に引き出されてしまう心配があるなどの場合には、早めに銀行に被相続人の死亡を伝えておくと良いでしょう。
凍結された預貯金の払い戻しを受けるための手続きは、遺産分割が行われる前か、行われた後かによって異なります。
遺産分割の後の場合には、「遺産分割協議に基づく場合」「調停・審判に基づく場合」「遺言書に基づく場合」によって必要な書類が異なってきます。
具体的な手続きは以下のとおりです。
被相続人名義の預貯金は、金融機関が被相続人の死亡を確認したときから、預金の取り扱いが凍結されます。
これは、一部の相続人が許可なく預金を引き出したりすることを防止するためです。
このように凍結された預貯金の払い戻しができるようにするための手続きは、遺産分割協議書を作成する必要があります。
ほとんどのケースは預貯金だけでなく、不動産などの移転手続きも必要となりますので、しっかり遺産分割協議書を作成する必要があります。
また、亡くなった人と、相続人全員の戸籍を集める必要があり、これらは非常に手間のかかる手続になります。
遺産分割協議書を作成する上では必ず戸籍を収集し、相続人を確定するという作業が必要になります。
遺産分割の前に、預貯金を払い戻しする場合
①金融機関所定の払い戻し請求書
②相続人全員の印鑑証明書
③被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのもの全て)
④各相続人の現在の戸籍謄本
⑤被相続人の預金通帳と届出印
金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせて確認する必要があります。
現実的には、四十九日や法要の費用で困った場合などが考えられますが、基本的には遺産分割協議を行う前に預貯金だけを払い戻すということは、相続を複雑にしてしまい、遺産相続のトラブルにもつながりますので、あまりお勧めは出来ません。
遺産分割が成立した後
遺産分割をどのように成立させたかにより、手続きが異なりますので事前にしっかりおさえておきましょう。
1)遺産分割協議に基づく場合
以下の書類を金融機関に提出することになります。
①金融機関所定の払い戻し請求書
②相続人全員の印鑑証明書
③被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのもの全て)
④各相続人の現在の戸籍謄本
⑤被相続人の預金通帳と届出印
⑥遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印)
金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせて確認する必要があります。
ポイント:戸籍謄本を取得する
銀行などの相続手続では、「被相続人(亡くなった方)の生まれた時から亡くなるまでの全ての戸籍」と、「相続人の現在の戸籍」を用意するように指示をされます。
例えば、「私は亡くなった父の唯一の相続人です」と窓口の方に言ったところで、相続の名義変更は行われません。
さらに、相続人がたとえ一人であると予測されたとしても戸籍によって相続人を確定する必要があります。
中には、子どもは自分だけと思っていても、戸籍を取り寄せたら実は別の女性との間に子どもがいた、などという、思いもよらない相続人が発生するケースもあります。
したがって、たとえ相続人が自分一人であったとしても、『戸籍』によって、"相続人が自分一人である"という事実を証明して手続きを進めていく必要があります。
さらには、全く遺産がない場合は戸籍は不要ですが、たとえ少額だとしても遺産がある場合には、銀行預金の解約(口座の変更)には戸籍は必要ですし、廃車寸前の金銭的な価値が無い自動車であったとしても、手続き上は戸籍が必要となります。
したがって、相続をするしないに関わらず、遺産の大小に関わらず、相続には戸籍が必要になるとお考え頂いた方が良いと言えます。
さらに戸籍は、役所に行けばすぐにそろうというものではありません。
戸籍は簡単に取れるという印象があると思いますが、それは本籍地や筆頭者を知った上で戸籍の請求をするからです。
相続手続の場合は、収集した戸籍から次に取るべき戸籍の本籍地や筆頭者を読み取るという作業が求められます。
つまり、戸籍の読み方というものを取得する必要がありますので、とても負担のかかる作業といえます。
相続手続きに必要な戸籍の収集では、別々の役所へ請求する事が当然となりますので、基本的に、すべて郵便による請求になります。
そのため、何かあった場合には、電話でやり取りをしたり、郵送間の手続が必要になったりと非常に手間のかかる手続になります。
そして戸籍も一種類だけでなく、「除籍謄本」や「改製原戸籍謄本」などといったものも必要になりますので、詳しい知識が要求されてしまいます。
これらのほかにも、実際には各相続の状況によって様々なパターンがあります。
今回紹介したケースはごく一般的なものですが、それだけでも複雑な手続を要します。
戸籍を収集する方法は2つしかありません。
「戸籍の読み取り方をゼロから勉強してご自身で収集する」もしくは 「相続手続きの専門家に、戸籍収集代行を依頼する」 のどちらかになります。
長い時間と労力をかけて、ご自身で取得されると確かに費用も最低限で済みますが、その分多くの時間(勉強の時間、書類収集の時間)がかかり、精神的にも負担となってしまいますので、専門家に任せるということもご検討いただければと思います。
ご不安な点などがありましたら、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。
以下では、稀なケースではありますが、調停・審判に基づく場合と、遺言書に基づく場合のケースを挙げましたのでご参照下さい。
2)調停・審判に基づく場合
以下の書類を金融機関に提出することになります。
・家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本
(いずれも家庭裁判所で発行を受けることができます)
・預金を相続した人の戸籍謄本と印鑑証明書
・被相続人の預金通帳と届出印
金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせて確認する必要があります。
3)遺言書に基づく場合
以下の書類を金融機関に提出することになります。
・遺言書
・被相続人の除籍謄本(最後の本籍の市区町村役場で取得できます。)
・遺言によって財産をもらう人の印鑑証明書
・被相続人の預金通帳と届出印
金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせて確認する必要があります。
現実的には、相続人全員で分割方法について合意した上で、預貯金の払戻しをするというこの方法が、もっとも円滑な流れであるといえます。
相続の手続きをしっかりと進めなければ、後にトラブルとなり、親族間の交流がなくなってしまったり、最悪の場合には裁判に発展してしまい親族間で争うことになってしまいます。
また、遺産分割協議がまとまらない状態が続いてしまうと、相続人全員が相続財産を一切承継する事が出来ないという事態にもつながってしまいます。
正しい手続きのためにも、ご不安な場合には専門家である弁護士にご相談ください。
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